◆◇━━━━━◇◆ 心と体のリハビリテーション研究会 ◆◇━━━━━◇◆        〜*−*〜 KOKO-KARA Information 〜*−*〜              第18号:2011.6.12              〜 筋疲労 〜            http://www.koko-kara.info/ ◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇   「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信を  希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。 CONTENTS〈目次〉───────────────────────────  ■ 筋疲労  ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加者募集中!  ■ 第3回 姿勢制御アプローチ講演会 参加者募集中!  ■ 編集担当者からの一言 ───────────────────────────────────               ■ 筋疲労 ■ ───────────────────────────────────   今回のテーマは『筋疲労』です。   筋疲労は「何らかの運動によって引き起こされる筋力や筋仕事量を最大限  に発揮する能力の低下」と定義され、大脳からの運動指令が脊髄の伝導路を  下行する部分でおこる中枢性疲労と、運動神経線維から効果器である筋でお  こる末梢性疲労に大別することができます。   今回は「末梢性疲労としての筋疲労」についてお伝えします。  <筋疲労の原因>   筋疲労を引き起こす原因は以下の4つと言われています。   (1) 筋内圧の上昇、筋血流の低下   (2) 栄養供給の低下、エネルギー供給の低下   (3) Ca2+取り込み過程の減少   (4) フリーラジカルの遊離増加・感受性の増加                   (ストレスと筋疼痛障害 1)より引用)   これら筋疲労の生理学的症状を呈する因子について、一つ一つ考察してい  きます。  ■筋内圧の上昇、筋血流の低下   筋収縮時、筋内圧(静水圧)が上昇し毛細血管圧を越えると、毛細血管が  圧迫され血流量を低下させます。 Edwards 2)は 20%MVC未満の筋収縮では筋  内の生理学的環境に変化はないが、20%MVCを超えると筋内血流は阻害され、  50%MVCで駆血帯での無血野手術の緊縛圧と同程度の圧となる(筋内血流は途  絶する)と報告しています。つまりそれほど強くない負荷を加えるだけで筋  内循環動態の変化が引き起こされてしまうということです。  ■栄養供給の低下、エネルギー供給の低下   筋内血流量低下は酸素、グリコーゲンの供給を減少させ、筋内に貯蔵して  いるグリコーゲンを利用した無酸素性代謝による筋収縮を生じさせます。  Gollnick 3)は 20%MVC未満の筋収縮ではST線維有意、20%MVCから徐々にFT線  維が稼働し、50%MVC以上ではFT線維の稼働が優先されるとし、50%MVC以上で  はグリコーゲンが著しく減少したと報告しています。グリコーゲンは筋収縮  時のエネルギー源であるATP生成に必要であり、ATP枯渇は筋疲労を生じさせ  ます。  ■Ca2+取り込み過程の減少   Ca2+は筋小胞体から放出され、アクチン・ミオシンフィラメント滑走時の  ATP 分解を促します。これは運動ニューロンの興奮による活動電位、横行小  管の脱分極により生じます。運動ニューロンの興奮が消失すると Na−Kポン  プの作用により横行小管は再分極し、Ca2+の再取り込みによって筋は弛緩し  ます。このときNa−Kポンプ機能にもATPが必要ですが、ATP枯渇はNa−Kポン  プ機能、Ca2+再取り込み機能を低下させ、筋収縮連関障害が生じます。   またCa2+再取り込み機能低下はCa2+の蓄積、ミトコンドリア機能低下を  生じ、さらなるATP形成を抑制します。  ■フリーラジカルの遊離増加・感受性の増加   フリーラジカルとは不対電子を持つために、他の分子から電子を奪い取る  力が高まっている原子のことをいい、電子を奪い取られた原子や分子は酸化  してしまいます。   フリーラジカルの量的増加・感受性亢進により筋は酸化し、筋内pH低下、  筋形質膜の興奮性低下などの筋代謝低下が生じます。  <筋代謝と筋疲労の関係>   これまで述べてきた筋疲労の生理学的症状に共通するものは「筋代謝」で  す。   筋代謝が低下した状態は、乳酸産生を増加させ、筋疲労を引き起こします。  またブラジキニンやその他の代謝性物質が筋線維間の組織間隙に放出され、  求心性侵害受容器を興奮させることで筋疲労・疼痛を生じます。   この状態が慢性化すると、毛細血管密度の減少がさらなる筋代謝低下を引  き起こし、容易に無酵素性代謝を生じる体となってしまいます。無酸素性代  謝での動作はFT線維優位の努力性の活動となり、交感神経活動の亢進を招き  ます。また、精神的ストレスや睡眠・食事などの生活習慣の乱れは、体性−  自律神経反射、内臓−体性反射による交感神経活動亢進を生じ、これらは筋  疲労を招きやすい身体環境をつくり出します。自律神経系のバランスが崩れ  ると生体恒常性(ホメオスターシス)は低下し、体そのものに備わっている  自然治癒力を低下させます。つまり、交感神経有意な筋代謝様式は、日常生  活においても筋疲労を招きやすい身体環境になってしまいます。  <筋疲労改善の留意点>   筋疲労が生じやすくなった身体環境を改善するにはどうしたらよいでしょ  うか。それには筋代謝様式を改善させるための運動療法が必要となります。  その際、医学的に安全な手法を用いることが重要になります。   医学的に安全な運動療法の手法についての詳細は KOKO-KARAコミュニケー  ション広場の下記スレッドにて質疑応答、討議されています。ぜひご参照く  ださい。 http://www.koko-kara.info/communication/index.html  ・“2nd Spine Dynamics療法について語りましょう”スレッド  ・“Spine Dynamics療法について語りましょう”スレッド(過去ログ)  ・“自律神経失調症について教えてください”スレッド  <引用・参考文献>   1)間野忠明:ストレスと筋疼痛障害-慢性作業関連性筋痛症-.2010.   2)Edwards RHT,et al:Myothermal and intermuscular pressure during     isometric contractions of the human quadriceps muscle.1972.   3)Gollnick PD et al:Selective glycogen intensity and at varying     pedalling rates.1974. ───────────────────────────────────      「認定及び専門理学療法士制度」ポイント認定研修会       ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加募集中!■ ───────────────────────────────────  ■ 2011年7月10日 Spine Dynamics療法(振替・追加)特別研修会  ■ 2011年7月18日 Spine Dynamics療法 沖縄 特別研修会   慢性疼痛疾患に対し、多くのセラピスト達が「患部のみの治療では完治し  ない」と感じているのではないでしょうか。世界的にも、慢性疼痛に対する  客観的評価法及び保存治療法はいまだ確立されておらず、現場では対症療法  が中心にならざるを得ません。   そこで我々は、患部を何らかの機序で発生した『結果』と捉えることで、  真の慢性疼痛疾患治療が実践できることを提唱します。慢性疼痛疾患の治療  では、身体のメカニカル及び反射的な両要素の因果関係を解き、根因となる  問題点を改善する必要があります。   本講演では、筋出力(作用力)と反作用力を緩衝する脊柱弯曲機能の関係  を、実技デモや多くの動画を用いて、分かりやすく説明します。  ◇ 開催期日   2011年7月10日(日) 日本青年館(東京:神宮外苑・国立競技場横)    2011年7月18日(月・祝) 沖縄・沖縄コンベンションセンター    ※ 7月10日は振替・追加研修会のため、3月13日に開催した研修会と     同じ内容で実施します。ご了承ください。    ※ 3月13日に震災の影響でご参加いただけなかった方は、過日のご案     内通り、振替参加となります。研修会事務局に参加の有無の連絡を     お願いします。また、参加券は 3月13日のものをご持参ください。  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    [トップページ]→[KOKO-KARA研究会主催の研修会]  ■2011年7月10日(日)      http://www.koko-kara.info/kensyukai/20110710/index.html ■2011年7月18日(月・祝)  http://www.koko-kara.info/kensyukai/20110718/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i/ ───────────────────────────────────      「認定及び専門理学療法士制度」ポイント認定研修会     ■ 第3回 姿勢制御アプローチ講演会 2011 参加者募集中! ■ ───────────────────────────────────   「慢性痛疾患」や「運動器不安定症」に対するアプローチに難渋するセラ  ピスト達が声を挙げ、発足した「姿勢制御アプローチ」講演会は、今年で3  回目を迎えることができました。これまでの「形態を見て、形態を変える」  治療手法を見直し、全身の「機能を診て、機能を改善する」手法、すなわち  「姿勢制御アプローチ」による新しい治療の確立と効果立証が期待される時  代に、今まさに入ったといえます。   当講演会では全身の運動連鎖「姿勢制御機構」を考慮したアプローチを基  軸に「速効性のある機能改善手技」に焦点を絞り、Part1の講師陣によるさ  らにパワーアップしたデモンストレーション検証実技をふんだんに踏まえ、  これまでの常識を打ち破り、明確な効果を得られる治療手法をご紹介します。   参加した方々が検証実技からその論理を理解され、日々の臨床に生かせる  論理習得と意識の向上を目的としています。   この機会にぜひご参加ください。  ◇ 開催期日    2011年 9月11日(日) 京都会場:京都テルサ    2011年10月16日(日) 東京会場:よみうりホール    2011年11月20日(日) 福岡会場:福岡国際会議場  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    http://www.koko-kara.info/kensyukai/part3.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i/ ───────────────────────────────────            ■ 編集担当者からの一言 ■ ───────────────────────────────────   今回は、末梢性疲労としての「筋疲労」について解説しました。   しかし筋疲労は、末梢の代謝産物、疲労物質の生理作用のみが原因ではな  く、中枢性疲労の機序も理解した上で、理学療法をおこなうことが必要だと  考えられます。   生理学的反応は目視できないため、日々その難しさを感じていますが、し  っかりと身体の反応を理解し予測・推察することが、的確な評価・アプロー  チに繋がると考えます。 **********************************************************************      − 最後までお読みいただきありがとうございました − 「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信  を希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。   ※バックナンバーはホームページに掲載しています。    今後,このようなメールの配信が不要な方は、お手数をおかけしますが、  タイトル欄に「配信不要」とご記入の上、返信してください。  また、アドレスの変更等がございましたら、その旨ご連絡ください。       発 行 : 心と体のリハビリテーション研究会       e-mail : info@koko-kara.info       URL : http://www.koko-kara.info/ *********************************************************************