◆◇━━━━━◇◆ 心と体のリハビリテーション研究会 ◆◇━━━━━◇◆        〜*−*〜 KOKO-KARA Information 〜*−*〜              第15号:2011.1.30           〜 体内における様々な免疫反応 〜            http://www.koko-kara.info/ ◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇   「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信を  希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。 CONTENTS〈目次〉───────────────────────────  ■ 体内における様々な免疫反応  ■ 姿勢制御アプローチ 沖縄特別講演会 参加者募集中!  ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加者募集中!  ■ 編集担当者からの一言 ───────────────────────────────────           ■ 免疫力を高める運動とは ■ ───────────────────────────────────  <はじめに>   寒さが一段と厳しい季節が訪れてまいりましたが、巷では例年同様にイン  フルエンザ、ノロウイルスなどが非常に流行してきております。これらウイ  ルス感染は免疫と非常に関係が深く、前月号でも個々の免疫細胞の役割など  についてご報告させて頂きました。   今回は、実際に感染した体内で生じる個々の免疫細胞の連携としくみ、そ  して運動がもたらす免疫への影響についてご紹介させて頂きます。  ●インフルエンザウイルス感染からの免疫応答の流れ●   ウイルスは細菌などと違って細胞の中でしか増殖できません。つまり自分  では増殖できず私たちの細胞に感染し、そこで増殖します。液性免疫である  抗体は細胞の中に入れません。そこで細胞性免疫である殺し屋たちが連携し  て強力なウイルスを相手に戦います。  (前回のおさらい)   細胞性免疫:マクロファージ、好中球、T細胞、B細胞、NK細胞   体液性免疫:サイトカイン、補体、抗体   1)ウイルスは喉などの粘膜を突破して体内に侵入し、近くの細胞の中に入    り込んで増殖を始めます。ウイルスに感染した細胞はインターフェロン    (サイトカイン)を分泌し、感染していない細胞に働きかけて、ウイル    スの増殖を止めようとします。   2)NK細胞はウイルスに感染した細胞を破壊していきます。マクロファージ    も感染細胞を食べて処理していきます。マクロファージはその処理した    断片を表面に抗原提示をし「外敵が来た」ことを知らせ、同時に分泌す    るインターロイキンが、脳に働いて発熱させて、免疫を活性化させます。   3)ヘルパーT細胞はマクロファージの抗原提示を見つけると、サイトカイ    ンを分泌し、キラーT細胞を活性化させます。ここから本格的にウイル    スの撃退が始まります。キラーT細胞は分裂・増殖し、ウイルスに感染    した細胞を直接破壊していきます。キラーT・ヘルパーT細胞は同時に、    サイトカインを分泌し、ウイルスの増殖を抑えます。   4)B細胞によって分泌された抗体は、NK細胞やキラーT細胞によって破壊    された細胞から飛び出してきたウイルスと結合して他の細胞への感染を    防ぎ、無害化します。死にかけたウイルスはマクロファージが処理しま    す。   5)最後にサプレッサーT細胞が活動していたヘルパーT細胞やキラーT細    胞に働いて免疫反応は終了し、インフルエンザは治癒します。   以上が、ウイルスに感染してからの免疫応答の実際です。細胞性免疫と体  液性免疫が連携しあい身体を守って身体恒常性維持に大きく関わっているこ  とがご理解いただけたと思います。  ●運動がもたらす免疫への影響●   運動の強度、時間により免疫力が向上したり、低下したりします。実際に  どのような影響をおよぼすのかについてご紹介致します。  ◎免疫力を高める条件   1日2時間以内の規則的で中等度(50%VO2max以下)の運動を継続すること。   一般的に50%VO2maxでの運動というのは呼吸のAT値の運動に相当します。  呼吸のAT値は筋全体の総和になるので、筋のAT値は35〜45%VO2maxとなり、  この負荷での運動は、以前当メルマガでも紹介したATトレーニング(第6号  参照)の方法が有効と考えます。   その運動負荷の基準として、黄川らが提唱する主観的運動強度「翌日筋肉  痛にならない」「運動中疲れを感じない」「だらだらと汗をかかない」「息  が上がらない」「運動後のきつさがない」「運動を継続したいと思える」が  参考になると思います。  ◎免疫力を低下させる条件   中等度から高強度(MAT55〜75)の運動を1.5時間以上行うとNK細胞、好中  球、マクロファージ、T細胞、B細胞それぞれ細胞数が一時的に減少する。   この状態を「病原体に開放的な状態(オープンウィンドウ)」といい、感  染症のリスクが高くなります。   マラソンランナーの上気道感染症、咽頭炎およびインフルエンザ様症状の  羅患は、1日当たり2時間以内の中等度で規則的な運動を行っている運動愛  好家と比べると、マラソンランナーに多く見られ、一度感染すると、比較的  長く継続してしまうという報告もあります。   免疫力は運動によって高める事ができるということは広く知られています。  しかし、運動量や負荷量を間違えると、免疫力を一時的に低下させることに  つながります。もちろん、運動だけではなく食習慣や生活習慣が免疫に影響  することは言うまでもありません。痛みや機能障害をもった患者様を診る機  会が多い私たちですが、その背景に「免疫」が影響していることも知識とし  て得ておかなければなりません。  【参考・引用文献】   「からだと免疫のしくみ」上野川修一著日本実業出版社   「免疫のしくみ」安部良監修PHP研究所   「免疫の意味論」多田富雄著青土社   「免疫の基礎」小山次郎他著東京化学同人   「免疫学の入門」今西二郎著金芳堂   「3日でわかる免疫」奥村康監修ダイヤモンド社   「運動と免疫」大野秀樹・木崎節子NAP limited ───────────────────────────────────      「認定及び専門理学療法士制度」ポイント認定研修会     ■ 姿勢制御アプローチ 沖縄特別講演会 参加者募集中! ■ ───────────────────────────────────   沖縄特別講演会では「速効性のある機能改善手技」に焦点を絞り、Part1  の講師陣によるさらにパワーアップしたデモンストレーション検証実技をふ  んだんに踏まえ、これまでの常識を打ち破り、明確な効果を得られる治療手  法をご紹介いただきます。    参加した方々が検証実技からその理論を理解され、日々の臨床に生かせる  理論習得と意識の向上を目的としています。   この機会にぜひご参加ください。  ◇ 開催期日    2011年 2月20日(日) 沖縄コンベンションセンター  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    http://www.koko-kara.info/kensyukai/okinawa/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i ───────────────────────────────────      「認定及び専門理学療法士制度」ポイント認定研修会       ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加募集中!■ ───────────────────────────────────   慢性疼痛疾患に対し、多くのセラピスト達が「患部のみの治療では完治し  ない」と感じているのではないでしょうか。世界的にも、慢性疼痛に対する  客観的評価法及び保存治療法はいまだ確立されておらず、現場では対症療法  が中心にならざるを得ません。   そこで我々は、患部を何らかの機序で発生した『結果』と捉えることで、  真の慢性疼痛疾患治療が実践できることを提唱します。慢性疼痛疾患の治療  では、身体のメカニカル及び反射的な両要素の因果関係を解き、根因となる  問題点を改善する必要があります。   本講演では、筋出力(作用力)と反作用力を緩衝する脊柱弯曲機能の関係  を、実技デモや多くの動画を用いて、分かりやすく説明します。  ◇ 開催期日    2011年3月13日(日) 日本青年館(東京:神宮外苑・国立競技場横)  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    [トップページ]→[KOKO-KARA研究会主催の研修会]     http://www.koko-kara.info/kensyukai/20110313/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i ───────────────────────────────────            ■ 編集担当者からの一言 ■ ───────────────────────────────────    前回と今回、2か月にわたって免疫力と運動に関しての知見を紹介しま   した。    私たち理学療法士・作業療法士は臨床現場で高齢者や運動習慣のない患   者様の多くをサポートしていると思います。免疫機能向上という予防的側   面を細胞レベルで理解することは患者様の身体状態を把握するうえで非常   に重要なことです。    また、最後にご紹介した免疫力と運動の関係については、トレーニング   期間中やマラソン後のアスリートは感染症を患いやすいと言う事実を、医   療に携わる私たちが知っておかなければならない知識の一つと考えられま   す。 **********************************************************************      − 最後までお読みいただきありがとうございました − 「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信  を希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。   ※バックナンバーはホームページに掲載しています。    今後,このようなメールの配信が不要な方は、お手数をおかけしますが、  タイトル欄に「配信不要」とご記入の上、返信してください。  また、アドレスの変更等がございましたら、その旨ご連絡ください。       発 行 : 心と体のリハビリテーション研究会       e-mail : info@koko-kara.info       URL : http://www.koko-kara.info/ *********************************************************************