◆◇━━━━━◇◆ 心と体のリハビリテーション研究会 ◆◇━━━━━◇◆        〜*−*〜 KOKO-KARA Information 〜*−*〜              第13号:2010.12.5      適切な目標設定の方法 〜SMART Goal Setting〜            http://www.koko-kara.info/ ◇◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆◇◆◇   「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信を  希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。 CONTENTS〈目次〉───────────────────────────  ■ 適切な目標設定の方法 〜SMART Goal Setting〜  ■ 姿勢制御アプローチ 沖縄特別講演会 参加者募集中!  ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加者募集中!  ■ 編集担当者からの一言 ───────────────────────────────────      ■ 適切な目標設定の方法 〜SMART Goal Setting〜 ■ ───────────────────────────────────  【はじめに】   私たちは業務のなかで必ず患者様の目標設定を行いますが、時に目標設定  に難渋したり、毎月同じ目標になってしまったりすることはないでしょうか?  また、目標達成までのプロセスを明確に示すことができず、患者様の目に見  えないプロセスになっていませんか?   目標設定をする理由は、リハビリテーションに対する意欲をかき立て、自  己医療を確立していただくためにあると思います。しかし、高すぎて達成で  きない目標設定は、不安と自信喪失を生み、意欲を失わせることにつながっ  てしまいます。   もちろん、目標がやさしすぎるのでは、やる気と集中力を失わせるばかり  か、大切な達成感をもたらしてくれません。そのため、適切な目標設定には  「技術」が必要になります。今回は目標設定の一手法についてご紹介致しま  す。  【適切な目標設定のポイント】   適切な目標設定をするためにはいくつかのポイントがあるといわれていま  す。そのポイントとは、(1) 行きたい方向が明確に示されている、(2) いつ  目標を達成したいか、(3) 目標達成に向けて何を、どうすべきかについての  綿密な計画、(4) 達成後の評価です。これらは、何かを達成するためのガイ  ドブックにあたります。ガイドブックには、上記のことが細かく書かれてい  ることが重要になります。   それでは、患者様への目標設定に当てはめてみましょう。   『富士山に登りたい』という患者様ニーズがあったとします。   そこで、目標設定のポイントを説明します。  (1) 行きたい方向が明確に示されている →「富士山に登れるだけの体力を    獲得する」  (2) いつ目標を達成したいか →「来年の○月×日に富士山に登頂する」  (3) 目標達成に向けて何を、どうすべきかについての綿密な計画 →「細分    化されたリハビリ計画」  (4) 達成後の評価 →「登った時の痛みは?疲れは?達成感は?また登りた    いか?」   (1)・(2)・(4) は具体例や評価を示しやすく、私たち理学療法士が頻繁に  使う目標だと思います。しかし、(3) のようにリハビリテーションプログラ  ム内容の計画に難渋するケースは少なくありません。そこで、次のチェック  を行います。  【目標の適切さのチェック法】   ここでは、目標の適切さをどのように評価したら良いのか(チェック法)  を述べます。イギリスのコーチングセオリーの中に「SMART Goal Setting」  と呼ばれるものがあります。SMART は「賢い」と訳されますが、5つのアル  ファベットは目標の適切さを評価する言葉の頭文字にもなっています。   S:「Specific(具体的な)」      目標はその内容と方向性が具体的に示されているか。   M:「Measurable(計測的な)」      目標が計測可能なものか。計測可能なものであれば、いつそれを達      成できたかがはっきり分かる。   A:「Achievable(達成可能)」      目標は達成可能なものか。頑張れば達成可能で、そのために全力を      尽くそうと思える目標になっているか。   R:「Realistic(現実的)」      夢を現実的な目標に細分化しているか。   T:「Time Phased(期限を区切って)」      目標に対して強い想いを持つために、期限を区切っているか。   このようにして目標を達成するための内容をチェックしていきます。   それでは上記 (3)「細分化されたリハビリ計画」を先ほどの“富士山登頂  が目標”の患者様を例に、『SMART』に当てはめてみましょう。   Stage 1-1:痛み除去に対するアプローチ(徒手療法・物療療法・Home-Ex         など)   Stage 1-2:筋肉量(%MV)とそれに見合った筋出力(WBI)を獲得する時期        (脊柱柔軟性獲得・循環トレーニングなど)   Stage 1-3:WBI に見合った歩行(WBI 80であれば1日合計 8000歩目標)   Stage 2-1:%MV 向上または %MV以上の WBI向上を目標とする時期(コン         ディショニング・目的に合わせたパフォーマンス向上トレー         ニングなど、自己医療獲得レベルの時期)   Stage 2-2:身近で低い標高の場所での登山練習、評価を行う時期   Stage 3-1:富士登山可能か評価を行う時期   Stage 3-2:富士登山後に評価し、達成感の状態を確認する時期   上記のように患者様がどの位置(Stage) にいるのかを見極めた上で、その  時期に必要な計画を立案していきます。外来クリニックであれば、患者様が  週1回程度でしか来院できずにリハビリそのものが、なかなか進まないとい  ったこともあるかもしれません。そのような時には随時目標を修正し体力や  柔軟性といった機能面だけではなく、食事指導や睡眠時間の調整など多角的  にアプローチし、患者様のライフスタイルにあった目標を設定する必要もあ  ります。   そしてもう一つ、リハビリ全期間を通して心がけておくべきことがありま  す。それは目標を絶えず意識させるという点です。「必ず富士登山を達成す  る」、「自分はできる」のように、肯定的なフレーズを用い、毎日それを声  に出して目標を意識していただきます。こうすることで目標達成により近づ  くことができます。   今回は目標設定の一手法についてご紹介しました。私たちが計画する目標  の多くは「結果の目標」に過ぎません。しかし、その結果に至るまでに具体  的に何をするのかという「行動の目標」が本当の意味で大切なのです。結果  を達成するためにはプロセスが明確でなければなりません。結果の目標に対  して「行動の目標」がしっかりしていなければ、患者様が意欲をもってリハ  ビリテーションに取り組むことができないのではないでしょうか。   今一度これらを考慮し、患者目線になってリハビリテーションを行うこと  が大切なのだと思うこの頃です。   参考文献   1)「スポーツ選手のための心身調律プログラム」                   脇元幸一・白石豊、大修館書店、2000 ───────────────────────────────────     ■ 姿勢制御アプローチ 沖縄特別講演会 参加者募集中! ■ ───────────────────────────────────   沖縄特別講演会では「速効性のある機能改善手技」に焦点を絞り、Part1  の講師陣によるさらにパワーアップしたデモンストレーション検証実技をふ  んだんに踏まえ、これまでの常識を打ち破り、明確な効果を得られる治療手  法をご紹介いただきます。    参加した方々が検証実技からその理論を理解され、日々の臨床に生かせる  理論習得と意識の向上を目的としています。   この機会にぜひご参加ください。  ◇ 開催期日    2011年 2月20日(日) 沖縄コンベンションセンター  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    http://www.koko-kara.info/kensyukai/okinawa/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i ───────────────────────────────────       ■ Spine Dynamics 療法特別研修会 参加募集中!■ ───────────────────────────────────   慢性疼痛疾患に対し、多くのセラピスト達が「患部のみの治療では完治し  ない」と感じているのではないでしょうか。世界的にも、慢性疼痛に対する  客観的評価法及び保存治療法はいまだ確立されておらず、現場では対症療法  が中心にならざるを得ません。   そこで我々は、患部を何らかの機序で発生した『結果』と捉えることで、  真の慢性疼痛疾患治療が実践できることを提唱します。慢性疼痛疾患の治療  では、身体のメカニカル及び反射的な両要素の因果関係を解き、根因となる  問題点を改善する必要があります。   本講演では、筋出力(作用力)と反作用力を緩衝する脊柱弯曲機能の関係  を、実技デモや多くの動画を用いて、分かりやすく説明します。  ◇ 開催期日    2011年3月13日(日) 日本青年館(東京:神宮外苑・国立競技場横)  ◇ 内容の詳細・お申し込みはホームページで!    [トップページ]→[KOKO-KARA研究会主催の研修会]     http://www.koko-kara.info/kensyukai/20110313/index.html    ☆ お申し込みは携帯電話からも可能です。     http://www.koko-kara.info/i ───────────────────────────────────            ■ 編集担当者からの一言 ■ ───────────────────────────────────   今回は目標設定の一手法を具体例を交えてご紹介しました。   患者様の夢(疼痛緩解や機能改善など)を現実的な目標に細分化していく  ことが、目標達成には不可欠となります。そして、患者様自ら治す手法(自  己医療)に気づいていただくために、私たちが目標達成に向けて的確な案内  役(コーチ)になることが必要だと思います。   今回のメルマガが皆様の目標設定の際の一助になれば幸いです。 **********************************************************************      − 最後までお読みいただきありがとうございました − 「KOKO-KARA Information」は、心と体のリハビリテーション研究会が主催  した研修会・講演会等に参加された方、ホームページからメルマガの配信  を希望された方に月1〜2回、無料で情報を配信するものです。   ※バックナンバーはホームページに掲載しています。    今後,このようなメールの配信が不要な方は、お手数をおかけしますが、  タイトル欄に「配信不要」とご記入の上、返信してください。  また、アドレスの変更等がございましたら、その旨ご連絡ください。       発 行 : 心と体のリハビリテーション研究会       e-mail : info@koko-kara.info       URL : http://www.koko-kara.info/ *********************************************************************